『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』短評

タラ監督知らないけれども

名だたる作品がある中で『ヘイトフル・エイト』しか見たことがないのに申し上げるのもおこがましい限りですが、正直タランティーノ監督作品といってもピンと来ない自分がいました。
冗長で暴力的という印象があり、勝手に距離を置いてしまっているのです。
しかし、本作は決してそのような決め付けが浅はかだと思えるような作りでした。確かに上映時間は長いが、冗長ではなく、暴力的でもない。

 

明るい芸能の世界にある切なさ

なにに惹かれたか、それは「切なさ」でした。

 

  • 行き詰まった人生と向き合う姿 

リック・ダルトンレオナルド・ディカプリオ)は落ち目の俳優であり、自分の望まない形での出演が増え、あるシーンの撮影では台詞を忘れてしまう。
それでも、次のシーンの撮影ではアドリブも踏まえながら持ち得る力を生かして見事な演技をする。

自分の望むように立ち行かなくなることについては身につまされるような思いで見る年齢になってしまったのだなぁと実感させられる。この気持ちが分かる人こそ見るべきかもしれない。この難局に対してある種自分の経験で乗り切る姿は、レオナルド・ディカプリオの演技力が説得力を持って示しており、こみ上げて来るものさえある。

 

  • 二人の関係性

頼りないリックに対して、クリフ・ブース(ブラッド・ピット)はだけは、専属スタントマンという関係を越えて。優しさという意味で母のような、ぶっきらぼうだけどどこかかわいげがあるところでは弟のようにすら思える。
一方、周りから良く思われていないクリフにたいして、リックは真っ当に接している。

大人になってこのような密接な関係を築くのは一般的には奇異ですけども、そのような関係があること自体はなんとも魅力的。
そしてその関係が金銭的に続かなくなり、そして結果的には終わってしまうことは言葉は足りないかもしれないが「切ない」のである。


衝撃の(?)ラスト

映倫のレーティングがPG12であることからも分かるとおり、結末は意外にもあっさりしています。そのことで、バイオレンス映画へと完全に傾倒することがないため、おだやかな悲しみに包まれます。
ただ、当時の映画への憧憬が深いほど、シャロン・テート(マーゴット・ロビー)にも感情移入できるのでしょうから、私のような一見さんには敷居が高いかなぁとも思わさせられました。

思いつきで見ただけでしたがばっちり揺さぶられ、個人的には意外な印象でした。